それは、1つのメッセージから始まりました。
台風10号被害を心配して、岩泉町役場に勤めている大学同期に連絡をとっていたのですが、それから約3週間後の9月21日にメッセージと4枚の写真が送られてきました。
「力を貸してほしい。詳細は電話で伝えたいので都合の良い時間を教えて欲しい」
その時の写真が、この4枚です。
正直、写真に衝撃を受けながらも私の方から同級生の今村君に電話をしました。
その時の電話を要約すると、
「地元で岩泉純木家具という、もの凄く俺がお世話になってきた会社がある。
工場も倉庫も被災をしてしまって、大変な状況にある。
お父さんの想いが詰まった材料を保管してある倉庫が2棟流されてしまって、職人さん等で手分けをして回収もした。
送った写真のような状況でまだ材料が残されている倉庫があるが、この中の材料を取り出すことが、なんとか出来ないだろうか。
ただ、危険な状況なので無理なときは無理で構わない。
社長は忙しいだろうから、会社の誰かでも良いからとにかく一度見に来てくれないか」
こうした内容でした。
写真で大変な状況は類推することが出来ても、詳細には現場を見ないと分かりません。
同級生とも久しぶりに会えるし岩泉の被災状況も気になっていたので、まずは自分の目で見てみようと24日(土)に現場に行くことにしました。
花巻の石鳥谷から岩泉の二升石ですと、2時間ちょっとの道程になります。
途中までは何ら普段と変わらない風景だったのですが、早坂高原にある長いトンネルを抜けると景色が一変しました。
岩泉町の地形も影響しているのですが、小本川や沢などが溢れ、護岸や道路が削られ、沢からは土砂や木材が押し流されて来ており、建物が崩れ橋ごと流されている惨状も目にしました。
仮設で通れるように道路の応急復旧もされておりましたが、被災した皆さんの事や地元建設業者さんのご苦労を考え、胸が締め付けられるような想いで現場に向かいました。
現場に到着し、今村君と純木家具の工藤専務さんと一緒に状況を確認させて頂きました。
大変な状況にも関わらず、笑顔で私を迎えてくれました。
「忙しいなか、遠くから来てくれて本当にありがとう」
実際に見たプレハブは、写真で見るよりも大きく感じ、川までは10m近い高低差があります。
また、床が一部抜けってしまっている倉庫は、道路が近く前後の作業スペースも広くはありませんでした。
専務さんとの会話で、こうしたやり取りがありました。
「今ではもう手に入らないような、目の細かい一枚物の材料が入っている。
父親が集めて今まで大切に保存してきたものだから、今回の災害でガッカリしてしまっている父の為にも、出来ることであればその材料を取り出したい。
このような危険な状況なので、自分達にはできない。 ただ決して無理にとは言いませんし、もし安全に作業をする方法があるのであれば、なんとかお願いをしたい。」
短期的な仕事であれば、岩泉の皆さんの力になれるかもしれない。 という想いが元々あったので、なんとか力になりたいという気持ちが強かったです。
ただ、安全に作業をすることが前提条件になってきます。
そこで確認をしたのは、
・建物に可能な安全対策をとって、必要に応じて建物を壊して材料を取り出すこと
・床が抜けている箇所もあるので、取り出せない木材や、作業の過程で下に落ちてしまう木材も、更にはキズをつけてしまう場合もあり得ること
・道路からの重機作業が出来ないので、床が抜けている建物からは一部しか材料を救出できないであろうこと
・作業スペースの関係で一部瓦礫を処分する必要性が生じるかもしれないが、岩泉町役場さんのご協力を得られるのかということ
出来る範囲のことを想定しながらリスクを考えて相談したのですが、
「1枚でも2枚でも木材を取り出すことができれば、それで十分です。建物は、どうしてもらっても構いません。」
また、岩泉町役場に勤めている同級生のお陰様で、様々なサポートも快諾してくれました。
私の方からは、
・来週早々に社内会議を行い、作業の方向性を再検討すること。
・弊社の工務部長と信頼できるオペレーターに、現場を確認してもらい、その上で最終的な判断をすることを確約して、現地確認を終えました。
同級生に、被災した純木家具さんの工場や、野球場も案内してもらいました。
様々な被災状況を目の当たりにして、どうしたらこの工事を安全に進めることができるか。
「とにかく力になりたい」 そうした想いを強くして、岩泉を後にしました。
翌週、弊社の工事担当者に現地を確認してもらった上で、早期に工事着手をすることを決定しました。
時間が経つにつれて、状況が悪くなることがあっても、良くなることは無いとの判断で、弊社で対応できる可能な限りの最短日程<10月1日(土)の工事開始>を組むことにしました。
それから。
同級生からのご縁だということと、お会いした専務さんの人柄にも、頑張ろうと決心した理由があります。
本当に大変な状況なのに、専務さんは笑顔で私を迎えてくれて、とにかく前向きに頑張ろうとしている姿勢にも心を惹かれました。
工事の最初から最後まで、確かに中の材料も大切ですが、それ以上に私達の安全を常に心配して、気を配って頂いた専務さんです。優しさの中に芯の強さを持っている印象でした。
もちろん、同級生も地域のために頑張っています。
と、長くなってしまったので、次に続きます。
◎無事に4日間の工事は終了し、工藤専務さんがブログで弊社の活動を紹介してくれています。
素晴らしい家具を作っている、岩泉純木家具さんのホームページもご覧下さい。
会社理念にも、感動を覚えました。
岩泉純木家具 復興情報ブログ:http://www.junbokukagu.co.jp/category/blog
岩泉純木家具ホームページ:http://www.junbokukagu.co.jp/